ホースセラピーとは?
馬に癒され人を癒せる人になる
ホースセラピーは乗馬を通じて、あるいは馬の手入れ、馬の飼養管理、厩舎の管理、馬の観察などを通じて、障がい者の精神機能と運動機能を向上させ、社会復帰を早めるリハビリテーションの方法の一つで、正式名称を「ホース・アシステッドセラピー」といいます。
医療面で犬や猫によるセラピー効果が認められるのは、現在のところ心理面とその波及効果としての生理面に限られています。ところがホースセラピーの場合は、医療、教育、スポーツ・レクリエーションの3つの要素を併せ持ち、しかも心身両面への直接的セラピー効果が認められるといわれています。
ホースセラピーによる効果 - 「医療」
身体的効果
- 全体的な健康の増進
- 筋力の強化・トレーニング(腹筋・背筋・足腰など)
脳に障がいがある人は機能的に筋肉を使うことが苦手な場合が多いです。乗馬での軽足歩(けいはやあし)は、鐙(あぶみ:足をかけるところ)を踏みながら立ち上がり、ふくらはぎで馬体を締め付けるため、股を締める筋肉の調整が出来、下半身の筋肉の効果的なトレーニングが可能となるため、障がいのある人にはうってつけのトレーニング法といえます。 - 柔軟性の向上
馬体の背中の丸みや上下運動を利用し、股の内側の筋肉を徐々に引き伸ばし、股関節を柔らかくします。また、ふくらはぎやアキレス腱を無理なく引き伸ばす効果もあります。 - 内臓機能の向上
乗馬をすることで揺れや振動が生じ、消化器や排泄などの内蔵へ適度な刺激を与えられます。これにより、内蔵機能の向上が期待されています。 - 平衡感覚の発達
立位バランスや歩行バランスなどが不安定な障がい者が、馬の規則正しいリズムに合わせて騎乗することで、平衡感覚を養えます。 - 脊髄の支持・姿勢の改善
股を開いて鞍(くら:馬の背にかける馬具)の上に跨れば、体を安定させるための腹筋と背筋のバランスがよくなり、日常生活の歩行や座位において、頭・脊髄・骨盤・下肢の位置関係などが良くなり、正しい姿勢が保持できるようになります。 - 腰痛予防
腹筋・背筋をバランスよく鍛えることで、腰痛の改善、予防につながります。
精神的効果
- 自信・満足感が得られる
馬に乗ることで、今まで体験したことのない高い視野、スピード感を得ることができ、「馬に乗った」という満足感を得られ、更には「大きな馬を操れた」という自信が生まれます。 - 不安や多動を軽減し、嫌悪感や恐怖心・攻撃傾向を減少
(ストレス・孤独感を緩和) - 意思・感情表現が豊かになる
馬の騎乗中は馬と意志の疎通を図らなければなりません。騎乗者は馬に自分の意思や感情を伝え、馬と友情を結ぶことで、自身の意思や感情を十分に表現することができるようになります。 - 知覚・運動能力の向上
- 対人関係のコツ・積極的な社会性を身につける
馬は犬と同じで社会性のある動物です。上下関係が馬の社会でも存在しているため、人間が馬に対して(ボスとなって)適切な指示を伝えなければならないため、海外では企業の研修として使われることもあります。「上司(ボス)と部下」「親と子」の関係を見直すための手段の一つとして馬が使われることもあるようです。乗馬研修を通じてリーダーシップ、社会性を身につける効果も期待されています。 - 協調性・調和性が身につく
社会から隔離されていると感じている障がい者は、乗馬により、家族や友人に馬場や騎乗の様子を話す機会が生まれます。他人に話を聞いてもらい、相手の話を聞くようにもなり、協調性・調和性が養われます。また、馬との信頼関係を築くためには、馬の気持ちを考えたコミュニケーションをとらなければなりません。そのため、他者の気持ちを考え、思いやるということが出来るようになります。
ホースセラピーによる効果 - 「教育」
馬と接する場は乗馬以外に水や餌を与えたり厩舎の掃除などを通じて馬と一緒にいることの安らぎや安心感が芽生え馬との絆が芽生えていきます。
馬の世話を通じて継続的な労働と馬の健康状態を感じ自らの責任感や自立心を養っていきます。また、馬に乗るという行為は馬に自分がどうしたいか伝えることを学ぶために 指導者とのコミニュケーションや援助が不可欠です。
馬に乗ることで他者との接し方の多くを学び達成感や成就感を持つことで挑戦する意欲を高めていきます。
ホースセラピーによる効果 - 「スポーツ・レクリエーション」
健康増進のための乗馬や乗馬してのゲーム、外乗トレッキングなどがあります。障がいのある人でも安心して乗ることができる調教された馬や、馬具などの工夫によって障がい者の競技会に参加することも可能です。